流線形'80

松任谷由実( Matsutoya Yumi ) 流線形'80歌詞
1.ロッヂで待つクリスマス

作詞:YUMI MATSUTOYA
作曲:YUMI MATSUTOYA

小さなつむじ風が
尾根をかけ降りるたびに
縞模様 広がる
月のゲレンデ 夢を見るように
私はガラスにほほよせる

ゲームにはしゃぐ人も
炎を見ていた人も
いつか おもてに出て
熱のある日は部屋に残された
子供の私がよみがえり すわってる

きみのきみの声の こだま追いかけ
窓もドアも越えて心は滑る
やがて響きわたる花火の音を
ロッヂで待つクリスマス

キャロルを口づさめば
わけもないなつかしさを
伝えたくなるから
町の誰かにカードを書くけど
素敵な言葉がうかばずに 目を閉じる

きみのきみの声の こだま追いかけ
窓もドアも越えて心は滑る
やがて響きわたる花火の音を
ロッヂで待つクリスマス

銀の月の影を 抱きとるように
森も谷も越えて心は滑る
きっとちがう明日が訪れそうな
ロッヂで待つクリスマス


2.埠頭を渡る風

作詞:YUMI MATSUTOYA
作曲:YUMI MATSUTOYA

※青いとばりが 道の果てに続いてる
悲しい夜は 私をとなりに乗せて
街の灯りは遠くなびく ほうき星
何もいわずに 私のそばにいて※

埠頭を渡る風を見たのは
いつか二人が ただの友達だった日ね
今のあなたは ひとり傷つき
忘れた景色探しに ここへ来たの
もうそれ以上
もうそれ以上
やさしくなんて しなくていいのよ
いつでも強がる姿 うそになる

セメント積んだ 倉庫のかげで
ひざをかかえる あなたは急に幼い
だから短い キスをあげるよ
それは失くした 写真にするみたいに
もうそれ以上
もうそれ以上
やさしくなんて しなくていいのよ
いつでも強がる姿 好きだから

白いと息が 闇の中へ消えてゆく
こごえる夜は 私をとなりに乗せて
ゆるいカーブで あなたへたおれてみたら
何もきかずに 横顔で笑って

(※くり返し)


3.真冬のサーファー

作詞:YUMI MATSUTOYA
作曲:YUMI MATSUTOYA

真冬のサーファは まるでカラスの群れのようさ
灰色の風しょって 空へ漕いでゆく
いちばんへたなだれかさん 私は願をかける
悩んでるこのごろ ぬけ出す気持ちで

次のいい波は まっ先につかまえてよ
フラレたことも 見えない明日も
笑いばなしさ そのうちに

眸をこらして見つめれば あいつは水を蹴った
おもわずほほえむと 前歯がこおるの

次のいい波は かならずつかまえるよ
フラレたことも 見えない明日も
笑いばなしさ そのうちに

ゆきずりの荒れた浜辺で 焚火を見つけたなら
声かけてそこには 彼がいるから
私とサーファーは まるでカラスの群れのようさ
Take offの高鳴りを かかとに感じる


4.静かなまぼろし

作詞:YUMI MATSUTOYA
作曲:YUMI MATSUTOYA

通りのドアが開き 雑踏が迷い込む
そのときまぼろしを見てる気がした
小走りのシルエット ガラスを押して
あなたが店に入ってきた

もしも微笑み この席で向き合えば
時は戻ってしまうの遠い日に

全てをわかち合い 歩いた二人が
今では柱越し別のテーブル
誰かとメニュウを選ぶささやき
ふりむく勇気がなかった

会わない日々を云いつくす言葉など
もういらないの気づかずいて欲しい

昔の恋をなつかしく思うのは
今の自分が幸せだからこそ
もう 忘れて


5.魔法のくすり

作詞:YUMI MATSUTOYA
作曲:YUMI MATSUTOYA

恋の悩み答えられるほど
火の粉くぐって来たわけじゃないんだけど
つらい夜も 安らかになれる
一粒のくすりを あなたにあげましょう

男はいつも最初の恋人になりたがり
女は誰も最後の愛人でいたいの
だから所詮おんなじ気持ちで
求め合っていると思っちゃいけない

さめたふりをして ふいうちをかけて
欲しいものは欲しいと云った方が勝ち

前の彼を思い出しなさい
どんなカサノヴァでもきのうは消せないわ

男はいつも最初の恋人になりたがり
女は誰も最後の愛人でいたいの
まずは少し余裕を持つのよ
するとふくらし粉もききめをあらわす

さめたふりをして 逃げごしはだめよ
欲しいものは欲しいと云った方が勝ち

さめたふりをして ふいうちをかけて
欲しいものは欲しいと云った方が勝ち
眠れ今宵 魔法のくすりで


6.キャサリン

作詞:YUMI MATSUTOYA
作曲:YUMI MATSUTOYA

あなたがひとりこの駅に
降り立ったことを耳にしたのは
夏の終りの風が海へ抜ける頃

暗い緑のReybanをほほにすべらせて
涼しい瞳投げかけながら
今朝の夢を横切った

※誰しも胸の片隅に煙るような影を抱く
キャサリン キャサリン
時がへだて
あなたは昔のままじゃない※

輝く日々の残像を追いかけるたびに
あなたの声やそのブロンドが
だぶるように見えて来る

かわってしまった街角で
かわったあなたにふりむく
キャサリン キャサリン
時がへだて
想い出だけを眩しくする

(※くり返し)

キャサリン キャサリン
時がへだて
みんなが昔のままじゃない


7.Corvett 1954

松任谷由実・来生たかお
作詞:YUMI MATSUTOYA
作曲:YUMI MATSUTOYA

月も追って来ないわ みんな探してるころ
Corvett 1954 あなたとどこへでも行く

きみの細いつめのような ライトは流線形
Corvett 1954 すぐに遠くへさらうよ
好きさ 好きさ 好きさ

手のひらをちょうだい はやがねの胸に
見上げる雲のバレーは 永遠のスローモーション

夜を渡る鳥たちは 初夏を告げるイリュージョン
ゆるい線を描く
二人はかけぬける 灼熱の気流

あの日たいくつでなけりゃ めぐり逢えなかったの
Corvett 1954 全てが ちがって見える
好きさ 好きさ ずっと

月も追って来ないわ ざわめきももう遠い
Corvett 1954 あなたと何処へでも行く
青い影をひいて


8.入江の午後3時

作詞:YUMI MATSUTOYA
作曲:YUMI MATSUTOYA

濡れたシャツをしぼって
胸の下で結んだら
照り返す陽差しより あなたの瞳
肌をさすの

気にしないと笑って
傷心をきくけれど
美しくできるのよ言葉にすれば
過ぎた恋は

口に出さずにやいてくれたら
私 ホロリと沖を見て Fall in love again

空の青さ深まり
この入江も秋になる
その頃は二人とも同じ夕陽を
どこで見るの

又 来年会えるよ
珊瑚礁が恋しけりゃ
今はただ いどころも明日も告げず
砂に立つの

髪がまとわる うなじのあたり
あなた見ている気がしたら Fall in love again

口に出さずにやいてくれたら
私 ホロリと沖を見て Fall in love again
Fall in love again Fall in love again Fall in love again


9.かんらん車

作詞:YUMI MATSUTOYA
作曲:YUMI MATSUTOYA

すいた電車が住宅街ぬけて
ひとしきり冬枯れをふるわす
あとに残った ひとりの足音は
川辺りの遊園地をたどる

さびついたかんらん車に腰をおろせば
ゆるやかに空は巡りはじめ
あなたの住むあたり広がってゆく
さよならが無性に恐かった
はりつめた想いが遠くなるの

いつしか雪が静かに舞いながら
チャコールの下界へと流れて
きっとあなたは窓の外を見てる
あのひとの肩を抱きよせて

つぎつぎと飛行船もゲームも止まり
粉雪が空を埋づめてゆく
終わりの暗示には美しすぎる
私だけ 冬空の旅人
地上に戻る頃 世界が止まる


10.12階のこいびと

作詞:YUMI MATSUTOYA
作曲:YUMI MATSUTOYA

Mon amour
夜の波を泳ぎつかれた魚のように
そっと横たわれば 汽車の響きがきこえるわ
Bon soir
眠い街はぼんやり光る海の底なの
ここは12階 通りを見下ろす

軽い寝息が ひとりぼっちにさせる
こんど逢う日を決めもしないうちに

Je t'aimerai
ゆるくしめた 蛇口の水の滴のように
いつも不安だけが 重たくなってはこぼれる
Mon amour
うでをはずし 涙くすぐる耳をこすると
背中見てるけはい けれど気のせい

軽い寝息が ひとりぼっちにさせる
こんど逢う日を決めもしないうちに

Mon amour
もしあなたが目の前から消えてしまったら
ここは12階 窓を開けて舗道をめがけ
紙のように舞うわ